ここ数日、母方の実家がある長野の田舎に帰っとった。
大学の授業も、サークルの練習もサボってな。いとこの結婚式があったもんで、それにいっとったんな。
だもんで方言が抜けんくなっちまってな、しばらくは東京弁がしゃべれんで、読みいい文にはならんとは思うが、そこはしゃーないでな。
この状態になった時になあ、無理に東京弁しゃべろうとするとなあ、不自然な日本語になるんな。この前田舎へ帰った時も方言が抜けんくなってな、「に」を「よ」に変えたり、「な」を「さ」に変えたり、いろいろやってみたんだが、友達から「なんかそのしゃべりかたクジャっぽい……」とか言われて本気で落ち込んだもんで、そういうことはせんほうがいいら。人間自然体が一番だに!
で、5月30日は、DSKHの発売日。e-storeで予約しとったもんで、朝10時くらいに起きてな、朝飯を戴いて、黄金の絆やっとったら家にソフトが届いてな。だもんでそれを持って、家を出たんな。
父の運転する車でな、車内でさっそくDSはじめてな。
途中の八ヶ岳ってところで、おいしいパンを買ってな。あそこはすばらしいところだで、機会がありゃあ行ってみるといいに。クロワッサンが本当においしいんな。あと、シュークリームだかなんだかがえらい有名でな、自分は甘味が苦手だもんで口に合わんのだけども、それもおすすめのようだに。
そいで、4時間ばかし車に乗ってな、田舎についたんな。
そこは母方の実家でな、自分から見て、祖父母と、叔父夫婦、それからその娘二人、そいから八か月になる白い柴犬が暮らしとる。今回はその上の娘――自分から見たら従姉妹――が、お嫁に行くっつってな、それの結婚式があったんな。
田舎だもんで、その家はたいそう広くてな、リビングやキッチンの他に、誰の部屋でもない和室がふたつばかしあるんな。自分たち(自分と父、母の3人な)がその家についた時、静岡だかどっかから、自分の叔父の兄弟が4人ばかし挨拶に来とったが、狭いことは全くなくてな。久しぶりに会う祖父母やらと話をしながら、初めて会うことになる柴犬のハナとあそんどったら、いつのまにか静岡の人は近くのホテルに帰っとったようで、すぐに夕飯の時間になった。
明日結婚することになる花嫁を囲んで、家族みなで、おいしいものをたくさん食べてな。東京と違って涼しいもんで、食欲もあったでな。
その日は23時くらいに布団に入って、ぐっすり眠った。
5月31日はいよいよ結婚式の当日だったんだが、自分は振袖を着るもんでな、朝4時半に起きた。こりゃあえらいことだに。
KHやって必死に目を覚ましてな、とりあえず朝ごはんをいただいて、それから化粧な。
つっても自分はどこでも寝ちまう病気だで、たとえば、大学へ行く時やどこかよそへ行くときらに、自分で化粧をして出かけるなんてことはせん。今まで化粧と言えば、他人に舞台化粧(皇帝レベルの)を施してもらった経験しかないもんで、この日ももちろん母にやってもらった。今日の化粧は今までのどのやつよりも薄かった。
そいで朝早くに叔母の運転する車で家を出てな、会場で着付けていただいた。振袖なんて初めてだったもんでやたらに重かった。
あいた時間はKHやってつぶしてな、いよいよチャペルで、結婚式な。
自分は今まで、結婚式ってやつを見たことが無い。厳密に言えば、物心つく前あたりに一度か二度、式に参加したことはあるらしいんだが、なにしろ自分で覚えとらんもんでな、今回が初めてに等しいんな。つまり、自分の中の結婚式の知識は、ドラクエ5だけだったんな。
まず親族紹介があったあと花婿・花嫁が登場したんだが、はれ、やっぱり花婿が先に来るんだな。んで、そのあと白いウェディングドレス着た花嫁が、一歩ずつ進んでくるんな。本当にドラクエ5の結婚式みたいだったに。
そんでな、ドラクエ5をやっとったころは、ブーケってのがなんで必要なのかいまいちわかっとらんかったんなけどもな、なるほどな、花嫁が最初あれを被って出てきて、花婿がブーケをよけて、キスをするわけなんな。納得したに。
指輪の交換ってのも、誓いの言葉ってのも、ドラクエ5で見た通りだった。いやあ、すごいことだに。
けども、誓いのキスを見て確信したが、やっぱり、結婚・出産ってのは、人間型の生物の男女間で行うのがいいな。この日誕生した夫婦は、まだおめでたの報告はないようだけども、エルミナージュ2の情報を見ちまっとるでなあ、どうしてもそう言うことが頭をよぎるんな。もちろん、同性愛を否定するつもりもないし、当人同士が会いしあっとるならば、そりゃすばらしいことだとは思うけどな、やっぱり、獣とか植物とか竜とか触手とか粘液とか、そういうので、誓いの言葉・結婚・出産ってのもな、どうかと思うんな。
そのあといったん場所を移すもんで、まず花婿と花嫁がチャペルを出るんだが、そのとき、スタッフのかたが、造花の花弁が大量に入った籠を持ってきてな。なんだと思ったんだが、みな訳知り顔でそれをつかんどるもんで、自分もそれに倣ったんな。
そしたらな、一歩ずつチャペルの外に出ていく花婿と花嫁に向かってな、みなが手につかんだ花弁を振りかけるんな。はれ、ドラクエ5で、みんながカラフルなドットを振りまいてくれたのは、これの表現だったのかと思ってな、えらい納得してな、自分も花嫁のドレスに、色とりどりの花弁を投げかけたもんな。
そのあと披露宴でな、料理が出されて、みんなでそれを食べた。
途中で親族のかたがビール持ってお酌に回っとったけども、自分は未成年だもんで、全てのお酌を丁重にお断りして、マイペースで水ばっかし飲んどった。流石に、覚醒剤飲んどいて飲酒はしたくないもんでな。
いくらかの出し物だとか、お色直しだとかがあったが、とりあえず自分は、おいしい料理を食べとった。あんなもの滅多にたべられんでな。ホタテがすごくおいしかったに。
あと、友人とか、会社の同僚とかの話もあってな。「花婿の○○君は、会社ではいつも人柄がよく、みなにしたわれとるすばらしい人です」みたいな話があったんだけどな。
何の因果か知らんが、自分の父親の名前も、今回の花婿と同じ○○でな。父はスピーチで花婿の下の名前がでるたびに居心地悪そうにしとった。こういう場所でのスピーチじゃ、当たり前だが、「○○君」のことを、よくほめるもんでな。
ついでに自分の名前は、父の名前の最初の漢字の読み方を受け継いどるもんで、「花婿のことを、俺は、いつも○と呼んでいます」とか言われるたびに、自分も居心地悪くなっとった。
式が終わった後に、父が神妙な顔をして自分に話しかけるもんで、なんだと思ったら、「頼むからおまえは、○○という名前の男とは結婚しないでくれ……」と、切実な様子で頼まれたくらいな。気持ちは分かるに。
披露宴には二次会もあったが、それは友人を集めたパーティといった感が強いもんで、親戚一同は、披露宴が終わったところで帰ってきた。
自分は過眠症のくせに朝早く起きすぎたらしくてな、途中から眠くて眠くてしゃーない状態になっとったもんでな、さっさとパジャマに着替えて、化粧だけ落としてな、えらいからつってしばらく休んだんな。JFやTGSでは2日連続の5時起きもやっとったもんで、大丈夫だと思っとったんだが、帯しょっとるせいで、椅子によりかかって座れんのがえらかったんかな。
ちなみに、その家の者は、あたりまえだけどもみな結婚式に出とったもんでな、犬のハナは、かわいそうだが、外につながれたまま、ひとりでずっと待っとった。
ハナは人間が大好きな犬で、まだ子供なんな。ここはいつも祖母か祖父は家におる家庭だもんで、ひとりで残される事に本当に慣れとらんらしくてな、みんなが家に帰ってきたときの喜びようはすごいもんだったに。
自分が起きたときには夕飯の時間だったもんで、みなでゆっくり、今日の結婚式の事でも話しながら夕飯を食べて、そのあとパソコンで、結婚式の動画や写真を見た。
その日も早めに寝た。
6月1日は、早めに起きて、早めに東京に帰る予定だった。
自分は見事に寝坊してな。10時に起きるつもりだったけども、起きてみたら13時すぎとった。
急いで朝ご飯を食べてな、予定より遅い時間に、祖父母の家を出た。
帰り際に、祖父母や、ハナと一緒に写真を撮ったに。
今度この家に来るときは、きっと自分は三味線を買って、それを持ってこようといったんな。
そいでまっすぐ東京には帰らんで、お土産屋に寄った。
うちの田舎のほうでしか買えんような珍味があってな……。
「ざざ虫」と「蜂の子」と「いなご」な。これの、お土産用のを買ってきた。
蜂の子はわかるな、蜂の幼虫な。あの白いうごうごしたのをな、佃煮にして食べるんな。炊き込みご飯にすることもあるらしいけども自分は食べたことはないな。
いなごもな、バッタみたいなやつだが、あれをそのまままるっとかじって食べるんな。煮付けもいいけども、自分は串刺しにして焼くのが好きなんな。エビみたいに、プリプリしとってな、また、あのバッタみたいな長くて太い足の食感がたまらんのな。見た目は悪いがな。ご飯によう合うに。
そいからな、ざざ虫は、東京の人は知らんようなのだけども、実は自分もよく知らん。川におってな、石の下におったり、川下りの船の下のとこについとったりするらしいんだが、とにかく珍味っつってな、高いんな。で、それを甘露煮にして食べるんな。見た目は1ミリから3センチくらいまでの、黒くて光沢があって、足がいくらかついてうごうごしとる細長い虫な。甘露煮にしてあるもんで、甘くて、そいからなんといっても、ざざ虫特有の食感がすばらしい。1ミリくらいのやつは、一見するとゴキブリの小さい奴みたいでな、足の部分が歯に挟まったりするんだが、その細い足の食感がすごくいいんな。で、3センチクラスになると、見た目も相当エグくてな、それを真っ白なご飯の上なんかに乗っけると、節のある細長い虫の醜悪な黒さとのコントラストで、思わず目を背けがちになるんだがな、食べてみると、体が大きい分、虫らしいシャキシャキ歯ごたえがあってな、これもまたおいしいんな。これもご飯にすごく合うんだに。
とにかくこの3つは東京じゃ買えんもんで、いくらか買ってきた。3つとも見た目が悪いもんで、なかなか東京の人からしたらな、悪いもののように見えるかも知らんけども、本当においしいんだに。機会があったらぜひ食べてみりゃいい。きっと大好きになるに。
そいからまた八ヶ岳によって、おいしいパンを買ってな。
やっと東京に帰ってきたんな。
荷物の整理やいろいろをやってから、夕飯では、白いご飯と一緒にざざ虫を食べた。
長野育ちである自分の母は勿論、「東京生まれ・東京育ちであるはずなのに、田舎の方言がほぼ完璧」という、不思議な経歴になっとる自分も、喜んでざざ虫を食べた。本当になあ、見た目も名前も最悪だけども、こんなにいいおかずはないに。
ただ、神奈川出身の父は、それを食べるどころか、見んともせんし、更には母と子供の間で繰り広げられる「やっぱりざざ虫はすばらしいな!」という会話にさえ参加しようともせんかった。もったいないこともあるもんだなあ。
そんなわけで、東京に帰って来て、やっと日記を書くことができたに。
本当は田舎で書こうとおもっとったんだが、結婚式が予想以上にえらくてな、時間が無かったもんでな。それにしても花婿も花嫁も出席した人も、みんな幸せそうだった。自分はな、いつか結婚式をやるとしたら、絶対ドラクエ5の結婚ワルツを流そうと心に決めとるんな!
で、明日、いや、今日は、朝食に八ヶ岳で買ったおいしいクロワッサンを食べて、普段どおりに学校な。今日休んじまった授業のことを、友達に聞くことも、忘れんようにせんとな。
一向に方言が抜けんもんで、外国語の授業や、源氏物語のゼミが、非常に不安なんだが、まあ、最悪、方言のままでもいいら。
そいじゃあな、もう休むでな。
おやすみなさい。